2007年 03月 31日
東京大空襲の見解で米国に毅然 1905年3月1〜10日、清国の奉天(現在の瀋陽)で日露戦争最後の大戦闘が行われた。日本軍25万人、ロシア軍37万人が激突した奉天会戦である。3月10日、日本軍は奉天に突入、制圧し、勝利を不動のものにした。後にこの日が陸軍記念日となった。筆者の好きな軍歌「歩兵の本領」でも、「アルプス山を踏破せし/歴史は古く雪白し/奉天戦の活動は/日本歩兵の粋と知れ」と歌われている。 45年3月10日、アメリカ空軍は300機を超える戦略爆撃機B29で東京を空襲する。筆者の父は、当時、江戸川区に住んでおり、この空襲に遭遇した。火の中を逃げまどう人々、メタンガスが腹にたまり膨れ上がった死体の山が打ち寄せる隅田川岸、小さな子供をおぶったまま炭素化している母子の死体の様子について、父から何度も話を聞かされた。父は「人の焦げるにおいはとても嫌で、記憶に焼き付く。このにおいが、平和ないまになっても、突然よみがえってくるんだ」とつぶやいていた。 筆者は93年10月4日のモスクワで父のこの話を思いだした。その日、エリツィン露大統領が国会議事堂に戦車で大砲を撃ち込んだ。砲弾には火薬が詰められていなかったが、摩擦熱で火災が発生した。国会議事堂は白亜の大理石で建てられたので「ベールィー・ドーム(ホワイトハウス)」と呼ばれていたが、上部は火災で真っ黒になった。そこから、人の焦げたなんとも形容しがたい嫌なにおいがする。このにおいはいまでも、突然、筆者の記憶によみがえってくることがあり、その日は一日中憂鬱(ゆううつ)だ。 社団法人日本戦災遺族会の調査によれば、45年3月10日の東京都区部の空襲による死亡者は8万3793人、負傷者は4万918人に上っている。軍事目標だけでなく、広範な民間人を巻き込む無差別爆撃は当時の戦時国際法に違反している。この点について、鈴木宗男衆議院議員が質問主意書で、「政府はアメリカ軍による東京大空襲は当時の国際法に違反して行われたものと認識しているか」とただした。 これに対して、3月23日、政府は安倍晋三内閣総理大臣名で「当時の状況についてはさまざまな見方があり、お尋ねの東京大空襲は、当時の国際法に違反して行われたとは言い切れないが、国際法の根底にある基本思想の一たる人道主義に合致しないものであったと考えられる」という答弁書を閣議決定した。筆者はこの内容を高く評価する。安倍内閣が対米追従であるという見方は浅薄だ。アメリカ政府が東京大空襲について「国際法の根底にある基本思想の一たる人道主義に合致しないものであった」という認識を示すことはありえない。同盟国であっても完全に一致した歴史認識をもつことは不可能だ。 マスコミは扱わないが、安倍内閣は過去の歴史についてもっと踏み込んだ見解も表明している。鈴木宗男氏が43年11月3日の大東亜宣言について、「大東亜宣言には、『米英は自国の繁栄のためには他国家他民族を抑圧し特に大東亜に対しては飽くなき侵略搾取を行ひ大東亜隷属化の野望を逞うし、遂には大東亜の安定を根柢より覆さんとせり』との文言があると承知するが、政府はこの認識を現時点でどのように評価しているか」とただしたのに対し、政府は2006年10月6日の内閣答弁書で「御指摘の文言は、会議の参加国が当時における認識を示したものであると考える」と答えている。大東亜宣言に署名した、大日本帝国、中華民国(汪兆銘政権)、タイ国、満州国、フィリピン共和国、ビルマ国が米英は侵略国であるという認識をしていたと、現在の安倍内閣が確認しているのである。この歴史認識にアメリカが同意することは絶対にないと思う。 現在、アメリカ議会で慰安婦決議が問題になっているが、事実誤認に基づく反日キャンペーンについて、日本政府がき然たる姿勢で反論することは当然のことだ。ただし、慰安婦を含む戦争に関連した歴史認識問題に日米共通の認識をつくることができるという幻想はもたない方がよい。筆者は安倍内閣は本格保守政権と認識している。それは、質問主意書に対して、ときにアメリカの基本的な歴史認識と衝突するような内容でも、ひるまずに答弁し、日本国家と日本人の歴史を取り戻すことに貢献しているからだ。この点についてマスコミが公平な評価をしないことに筆者は違和感を覚える。 FujiSankei Business i. 2007/3/29 ラスプーチンと呼ばれた男 佐藤優の地球を斬る/安倍政権の歴史認識 http://www.business-i.jp/news/sato-page/rasputin/200703290005o.nwc 政府答弁書「東京大空襲は国際法基本思想に合致せず」 03/24 15:04 政府は23日の閣議で、昭和20年3月10日の米軍による東京大空襲について「当時の国際法に違反して行われたとは言い切れないが、国際法の根底にある基本思想の一つたる人道主義に合致しないものだった」とする答弁書を決定した。鈴木宗男衆院議員の質問主意書に答えた。 答弁書はまた、空襲による死傷者数について、日本戦災遺族会の調査に準拠して(1)死亡者8万3793人(2)負傷者4万918人-とした。 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/44634/ 一九四五年三月十日の東京大空襲に関する質問主意書 提出者 鈴木宗男 一 一九四五年三月十日の東京大空襲(以下、「東京大空襲」という。)による死者、負傷者、被災者の数を明らかにされたい。 二 政府は、アメリカ軍による「東京大空襲」は当時の国際法に違反して行われたものと認識しているか。 右質問する。 平成十九年三月十五日提出 質問第一二〇号 http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/166120.htm?OpenDocument 近聞遠見:外は一目置いている=岩見隆夫 能登半島地震が発生した25日、石川県選出の森喜朗元首相に、真っ先に見舞いの電話をかけたのは民主党の長老、西岡武夫だった。森の国会事務所まで足を運んだのは自民党の青木幹雄参院議員会長である。 「これがワセダなんだなあ」 と森は言う。3人は同じ時期、早大に在学していた。慶大ならこうはいかないだろう、というニュアンスもこもっている。 政界にかぎらず、早大出身者は結束が固い。慶大はクールと言われるが、小泉政権時代は慶大閥が取りざたされた。 その点、安倍晋三首相と同学の成蹊大卒は与野党通じ古屋圭司元副経済産業相1人だ。学閥を作りたくても、作りようがない。安倍政権のまとまりが悪い理由の一つは、案外そんなところにもあるのかもしれない。 昨年9月末、初組閣を終えたあとの記者会見で、人事方針を聞かれ、安倍は、 「政治は結果が大切、結果を出せる方を選んだ」 と述べた。しかし、政権発足から半年が過ぎて、結果を出すどころか、足を引っ張る閣僚が目立つのに驚く。それが支持率を下げている。 世論調査の結果をみると、世間は安倍の指導力にも懐疑的だ。頼りない首相と映っている。だが、外の目は違う。 ドイツの有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」は、先に安倍が訪独した際、 <安倍首相は、内政では戦後最大のがんだった教育基本法の改正にメスを入れ、国際テロや極東アジアにおける緊張の高まりに備え、防衛庁の「省」への格上げを実現した。 また、日本でもようやく現代の凄惨(せいさん)な情報戦に対応し、日本版NSC(国家安全保障会議)創設の筋道をつけた> などと報じ、外交面の活動も高く評価した。 ドイツ在住のノンフィクション作家、クライン孝子は、そうした現地の空気を、 <(安倍は)日本の新しい国家像を内外に印象づけたわけで、欧州では戦後の日本の首相としては珍しく大胆かつ斬新な政治家として、一目置かれている> と伝えている。(17日付「産経新聞」) また、パリでは、防衛省に昇格した時の式典あいさつで、安倍がドゴール将軍(第5共和制初代大統領)の著書「剣の刃」の一節を引用し、 「難局に立ち向かう精神力の人は、自分だけを頼みとする……」 と述べたことがニュースになり、すこぶる評判がいいという。 アジアでも、ある財界首脳が、 「昨年秋の安倍訪中の前と後に中国に行ったが、空気がガラリと変わっていた。幹部が口をそろえて安倍さんを激賞する。こんなに急変するものかとびっくりしましたね」 と言うように、安倍は人気者だ。 米国とは慰安婦問題がこじれているが、4月の安倍訪米で調整されるだろう。同盟関係が揺らぐようなテーマではない。 総じて、国際社会での安倍は、好感度が高い。しかし、国内の目は厳しく、とても一目など置かれていない。この温度差は何に起因するのだろうか。かつて、 <戦後、一国民主主義、一国繁栄主義、一国平和主義、まとめて一国とじこもり主義が日本の常識の主流であった> と批判したのは、政治学者の京極純一である。いまもその性癖が日本の世論を偏狭にしていないか。そろそろ、とじこもりでなく<世界のなかの日本>に開眼する時ではないか。(敬称略) http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/iwami/kinbun/news/20070331ddm003070165000c.html 「戦後体制からの脱却」を進める安倍首相 【安倍政権6カ月 孤独と苦悩の日々】
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| 2007-03-31 21:37
| 政治経済
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