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2007年 04月 27日

日本は世界で一番株式を使った買収がしやすい 国になる

「三角合併」来月解禁:海外企業にM&A新手法-魅力増す日本企業(3)

4月27日(ブルームバーグ):「日本は世界で一番株式を使った買収がしやすい 国になる」――国内外の合併・買収(M&A)に詳しい西村ときわ法律事務所の太田 洋弁護士は「三角合併」解禁の意義についてこう語った。海外企業が日本企業買収の 対価として自社株を活用できるこの新たな手法は、表裏一体として日本企業の経営者 に企業価値への意識を強めさせ、日本企業の魅力が増すことにもつながる。

三角合併は海外企業が日本企業を買収する際の新制度。海外企業の日本の子会社 が親会社株を取得、日本企業と合併契約を結ぶ。日本企業の株主は保有株を差し出す 対価として海外企業の株式を子会社から受け取ることになる。

日本企業の取締役会決議と株主総会特別決議(議決権の過半数が出席、うち3分 の2以上賛成)が成立には必要。これまで海外企業による日本企業買収は実質的に現 金での株式取得しかなく、合併対価は存続会社株式しか認められていなかった。

この三角合併を可能にする「合併等対価の柔軟化」が5月1日施行される。条項 自体は2006年5月1日施行の会社法に盛り込まれたが、日本企業が買収防衛策を導入 する期間を確保するためなどとして、1年間の経過措置が設けられた。

三角合併は「現金なしでの買収が可能」というのが要諦。成立条件を踏まえると 敵対的(取締役会が賛同しない)買収には不向きだ。独立系M&A助言会社GCAの 福谷尚久パートナーは「三角合併を恐れた顧客大企業からの相談は実はない」と明か す。敵対的買収急増といったいわゆる外資脅威論は、証券会社の投資銀行部門が事業 機会拡大を狙って喧伝したり、メディアが煽っている影響が大きい。

GCAは米シティグループが株式公開買い付け(TOB)を仕掛けた日興コーデ ィアルグループの財務アドバイザー(FA)。創業者の渡辺章博、佐山展生の両パー トナーは内外のM&Aに詳しい。

ブルームバーグ・データによると1-3月期のFA関与額は、野村ホールディン グスやみずほ、ゴールドマン・サックスといった内外の強豪を抑えて首位になった。

有効性増す買収・合併提案

とはいえ5月1日をもって海外企業は三角合併という新たな日本企業の買収手法 を手に入れることは確かだ。特に時価総額が大きい企業には財務へのインパクトが少 なく、活用の余地が大きい。敵対的買収にはそぐわないが、買収・合併提案自体は三 角合併解禁によって有効性を増す。

これまでの現金のみの買収提案から、株式による買収提案、株式と現金の組み合 わせというミックス提案が可能になるからだ。株式と組み合わせることで現金部分の プレミアム(上乗せ)が付けやすくなる。

株主にとっては現金を受けるか株式と交換するかの選択肢が広がり、取締役は買 収提案に反対しにくくなる。例えば外国人株主や機関投資家が多いソニーに米GEが ミックスによる三角合併を提案した場合、個人株主は現金を受け取り、外国人や機関 投資家はGE株を受け取るといった例が想定できる。

これは同時に、日本企業の株主や経営陣がM&Aのボーダレス化加速を望むと望 まざるとにかかわらず意識せざるを得なくなることを意味する。この反応として企業 経営者は買収防衛策を導入したり、株主の支持を集めようと増配をしている。経済産 業省によると防衛策導入企業は200社を超えた。

さらに最強の買収防衛策であるMBO(経営陣による企業買収)、非公開化に踏 み切る企業も出ている。2007年だけでもテーオーシー、サンスター、明光商会、ツバ キ・ナカシマといった企業がすでに発表した。抜本的事業再編や上場デメリット排除 がMBOの主要因だが、結果的に非公開化は買収防衛にもつながる。

敵対的買収の誘因?

三角合併は敵対的買収の誘因となる可能性がある――日本経団連はこうした考え を打ち出した。そして株主保護や技術流出防止の観点から、日本企業の株主が対価と して国内取引所非上場の海外株を受け取る場合は総会要件を特別決議より厳しい特殊 決議(総株主の過半数、かつ議決権の3分の2以上の賛成)にするよう提言した。

友好的な買収のみに本来有効な三角合併で経団連が懸念しているのは、いわゆる 「強圧的二段階買収」。海外企業がTOBを実施、過半数または3分の2超の株式を 取得したうえで取締役を入れ換えて三角合併に賛成させるというもの。

三角合併予定を宣言してTOBを仕掛けると、本来は手持ち株を手放したくない 株主も海外企業の株よりは現金のほうがいいとしてTOBに応じるとの見方だ。とは いえ、これはTOB制度の問題。TOBの段階で現金拠出が伴い、三角合併の利点は 損なわれる。証券取引法改正で3分の2超取得には全部買い付け義務も伴う。

米ベル・ヒューズは株式6%を保有していた東光に三角合併による統合を提案し た。これに対して東光取締役会は2月までに提案拒否を伝え、話は立ち消えになって いる。ベルは4月中旬から東光売却を始めて保有比率は現在2%を下回っている。

東光株の保有目的も「政策投資や経営参加」から「純投資」に戻しており、事実 上統合提案を白紙撤回、利益を確保して撤退したことになる。三角合併が敵対的買収 に不向きな証左といえる。

グローバルスタンダードより一歩前

ドイツとフランスに三角合併の制度はない(複雑な仕組みにより実施は可能)。 英国には制度はあるが成立要件が極端に厳しい。三角合併発祥の地である米国にはも ちろんある。しかも、米国企業が日本で日本企業を買収する場合、新株発行といった 手続きに必要な諸書類は日本語訳するだけで通用するという。

逆に米国内で三角合併により日本企業が米国企業を買収する際には、必要書類を 米国会計(SEC)基準で作成する必要がある。このため、実質的に三角合併で米国 企業を買収できる日本企業は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック上 場でSEC基準導入企業にほぼ限られるのが実情だ。

日本での三角合併施行を前に懸案になっていた課税措置についても、繰り延べが 認められることになった。繰り延べが認められないと、日本企業の株主は海外企業の 株式を受け取った段階、日本企業自体は合併の段階で納税負担が発生することになる。

在日アメリカ商工会議所(ACCJ)や欧州ビジネス協会(EBC)は、課税繰り延 べが認められないと三角合併が事実上できなくなるとして容認を働きかけていた。

英アレン・アンド・オーベリー外国法共同事業法律事務所の中田順夫・弁護士は、 一連の法制面の手当てと会計制度を踏まえて「日本は世界でも三角合併がやりやすい 国になったといえる」と述べた。

「小が大を呑む」

「小が大を呑む合併」――高視聴率を記録して3月に終わったTBSドラマ「華 麗なる一族」(原作:山崎豊子)で阪神銀行オーナー頭取の万俵大介(北大路欣也) は都銀上位行との合併を画策して何度もこうつぶやいた。現金が要らない三角合併を 活用すると小が大を呑む合併も容易になる。

日本企業が主体だが、実際に似た案件が最近あった。東証1部上場の旭テックは 2006年秋、米自動車部品のメタルダイン買収を発表した。有利子負債返済などを含め 総額は1373億円。旭テック全額出資の米買収子会社がメタルダインと合併する。

売上高はメタルダインが2212億円(05年12月期)、旭テックは580億円(06年 3月期)で4倍弱の開きがあり、小が大を呑む合併になった。メタルダインの普通株 と優先株の株主は現金を受け取り株主の権利を失った。そのうえで主要な株主はその 現金で旭テック新株を引き受けた。

最終形としては旭テックが買収対価として自社株を活用したことになる。合併存 続会社がメタルダインだったことで「逆三角合併」(三角合併は買収子会社が存続会 社)ともいえる案件になった。

こうした取引が海外企業にも日本で可能になる。ただ、三角合併での小が大を呑 む合併には制約がある。相手先の規模が大きすぎると、合併後に相手先株主が買収主 体の主要株主に登場するからだ。実際に旭テックの案件ではメタルダイン株主が旭テ ック株11.4%(3月払い込みの増資を含む)を保有する第3位株主に登場した。

発行済み株式が増えたためRHJインターナショナル(旧リップルウッド)の持 ち株比率は37.1%に低下、旭テックはRHJの子会社ではなくなった。

日本企業にも活用余地大きい

海外企業ばかりでなく、三角合併は日本企業にも活用の余地が少なくない。経営 コンサルティングやM&A助言を手掛けるアビームM&Aコンサルティングの岡俊子 代表取締役は、三角合併は買収防衛策にも活用できると語った。買収防衛を手助けし てくれるホワイトナイト(友好的な第三者である白馬の騎士)に現金確保・調達が必 要ないのがメリット。

仕組みとしては、例えば投資ファンドに株式を買い占められた企業が買収子会社 を設立、買収子会社がホワイトナイトと合併する。企業はホワイトナイトの株主に新 株を対価として割り当てる。この新株発行により発行済み株式が増えて投資ファンド の持ち株比率が低下するというもの。

この三角合併の買収防衛策としての利用について岡代表は「まだアイディアの段 階」としながら注目すべき枠組みと強調している。

また、持ち株会社形態の企業が他社と合併する場合も三角合併のしくみを活用す ると、従来よりも円滑に事業統合ができるとしている。さらに株式を持ち合っている 企業同士が共同持ち株会社で経営統合・合併する場合、保有することになる自己株の 処分にも三角合併制度は有効と想定している。

さらに合併等対価の柔軟化により「現金交付合併」も可能になる。合併時の対価 は条文上何でも可能で、もちろん現金でも可。現金でTOBを仕掛ける場合は事前警 告型買収防衛策の手続きに従う必要があるが、現金交付合併ではその必要がない。手 続きに要する期間もTOBよりは短い。税制面での問題がネックになっているが、日 本企業にはこうした三角合併、合併等対価の柔軟化の活用方法がある。

魅力増す日本企業

三角合併解禁を前に日本の企業経営者は、本業強化はもちろんのこと買収防衛策、 増配、自社株買い、株式持ち合いなどさまざまな対応策を打ち出した。鉄鋼世界最大 手の蘭アルセロール・ミタルの攻勢にさらされる鉄鋼業界では、新日本製鉄やJFE ホールディングスがこのすべての策を打ち出した。

ブルームバーグ・データによると、日経平均採用銘柄で過去1年間の上昇率順位 は2位に新日鉄、7位にJFEが入った。企業価値を高める施策が奏功して、すでに 株主の利益拡大に結びついていることになる。

この順位には商船三井が3位、川崎汽船が5位、日本郵船が14位と海運大手3社 がそろって入った。海運業界では世界最大手デンマークのAPモラー・マースクが買 収攻勢をかけている。日本勢が巻き込まれる気配はいまのところないが、日本の経営 陣が自社の企業価値を意識するうえでAPモラーの動向は見逃せない。

企業価値向上策として今後は、日本では珍しい積極的な「身売り提案」も出てく るかもしれない。好まざる企業から買収提案されるよりも、好ましい企業の傘下に積 極的に入ることで勝ち残りを目指すという考えだ。身売り提案時には条件を自ら指定 できるという主導権も握れる。1984年だが万有製薬が米メルク傘下に入った例はある。

M&Aに詳しい長島・大野・常松法律事務所の井上広樹弁護士は、三角合併施行 を直前に控えて国内外の企業からの三角合併についての相談は増えていないとの現状 を示した。実務上のニーズは言われているほど多くないとしている。同時に三角合併 により「日本企業の買収対象としての魅力が増し、海外企業が日本企業に興味を持つ 契機にはなり得る」と指摘した。

日本企業にも事業機会

税務上の問題は一応クリアされたが、三角合併には海外企業が新株を使う場合の 発行や開示方法をはじめとした諸手続きが必要。このため「しばらくは上場企業でな い閉鎖会社をターゲットとした買収制度の1つに位置づけられる」(アンダーソン・ 毛利・友常法律事務所の小舘浩樹弁護士)公算も大きい。同時に現在の日本のM&A 案件で重要な役割を演じている投資ファンドを含めた当事者の行動様式に与える影響 は小さくない。

三角合併はあくまでM&Aの一手法。独ダイムラー・ベンツは米クライスラーを 三角合併により98年に買収した。現在は不振のクライスラー部門を売りに出している。

アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)トランザクション・アドバイザリーサー ビスの杉原敦マネジングディレクターは、三角合併解禁を前に「重要なのはM&A自 体ではなく統合を成功させることであり、ダイムラーは統合効果を描いた青写真を実 現できなかった」と述べた。

三角合併をめぐり企業経営者が自社の価値を強く意識して行動することは、株主 価値やステークホルダー(利害関係者)の増大につながる。三角合併自体が買収対象 としての日本企業の魅力を浮き彫りにすると同時に、対応策を打ち出した日本企業は 確実に地力を増している。

「海外企業による三角合併を使った日本企業買収が今年度に実現しても不思議で はない。同時に日本企業が三角合併も選択肢に米国企業の買収を狙う案件が進行して いる」と中田弁護士は指摘した。三角合併は日本企業にも事業機会をもたらしており、 利点を見極めた活用が重要だ。

◎三角合併:英語の「Triangle merger」の直訳。州ごとに会社法が違う米国で州をま たぐ企業合併に活用されており、日本企業に対して国をまたぐ海外企業との合併にも 適用されることになる。会社法(2006年5月1日施行)749条1項2号「合併等対価 の柔軟化」で、合併に際しては存続会社の株式、社債、新株予約権、新株予約権付社 債や株式等以外の財産を消滅会社の株主に交付することが可能になった。

この株式等以外の財産には現金や存続会社の親会社株式が含まれ、存続会社の親 会社株式の場合に三角合併になる。この部分の施行は、経済界などの要請を受けて1 年先送りされた。日本企業が三角合併で外国企業を買収することは現在でも可能。


【国内、海外企業のクロスボーダーM&A手法の推移】
――――――――――――――――<旧商法下>――――――――――――――――
○日本企業が海外企業を合併・買収
・現金で株式を取得
・新株予約権を海外子会社に発行して、それを対価として買収
(2004年にNTTドコモが米AT&Tワイヤレス買収で検討、実現せず)
・海外上場のADRを使い三角合併
(1990年に京セラが米AVXを買収、この京セラ方式は違法性の疑いあり)
・新株発行による事実上の国際株式交換
(2005年にそーせいが英アラキスを買収、相手が未公開=閉鎖=企業のみ可能)
○海外企業が日本企業を合併・買収
・現金で株式を取得
――――――――――――<会社法施行、2006年5月1日>―――――――――――
○日本企業が海外企業を合併・買収
・上記に加えて三角合併が可能(京セラ方式が明示的に許容)
○海外企業が日本企業を合併・買収
・従来の手法と変化なし
――――――――――<合併等対価の柔軟化、2007年5月1日>―――――――――
○日本企業が海外企業を合併・買収
・従来の手法と変化なし
○海外企業が日本企業を合併・買収
・上記に加えて三角合併が可能
【三角合併の過去の主な例】 京セラによるNYSE上場米国預託証券(ADR)を活用した米AVX買収(1990年) 独ダイムラー・ベンツによる米クライスラー買収(98年) 英ボーダフォンによる米エアタッチ・コミュニケーションズ買収(99年) 米ファイザーによる米ワーナー・ランバート買収(2000年) 英HSBCによる米ハウスホールド・インターナショナル買収(2002年) 米グーグルによる米ユーチューブ買収(06年10月)


【日米同業企業の時価総額比較】(兆円、日本時間26日時点でブルームバーグ集計)
武田薬品工業 6.92-22.6 ファイザー
7&i 3.38-24.0 ウォルマート・ストアーズ
みずほFG 8.49-31.4 シティグループ
日立 3.07-44.0 ゼネラル・エレクトリック(GE)
花王 1.81-23.7 プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
【日本企業による外国企業の買収・出資上位5位】 発表日 買い手 買収・出資先 形態 金額 06.12/15 JT 英ガラハー 買収 2兆2500億円 06.3/17 ソフトバンク 英ボーダフォン日本 買収 1兆8000億円 00.11/30 NTTドコモ 米AT&Tワイヤレス 出資 1兆 792億円 99.3/10 JT 米R.J.レイノルズ 買収 9420億円 90/11/27 松下電器産業 米MCA 買収 7800億円

【外国企業による日本企業の買収・出資上位5位】 07.3/14 米シティグループ 日興コーディアル 買収 9200億円 99.1/23 米GEキャピタル 日本リース部門と子会社 買収 8700億円 01.5/01 英ボーダフォン 日本テレコムと子会社 追加出資 6520億円 99.3/17 仏ルノー 日産自、日産ディ 出資 6430億円 00.5/13 米プルデンシャル 協栄生命保険 買収 4140億円 (レコフ資料から作成)


【2007年1-3月FAランキング】(日本企業関係で集計、百万ドル)
順位 社 名 関与総額 件数
1. GCA 21533 6
2. シティグループ 16482 9
3. 野村ホールディングス 9905 38
4. メリルリンチ 9486 7
5. KPMGコーポレートファイナンス 7677 7
6. 三菱UFJフィナンシャル・グループ 7138 23
7. モルガン・スタンレー 4571 6
8. みずほ 3523 20
9. 大和証券SMBC 2357 27
10. ゴールドマン・サックス 1749 5
JT株の午前終値は、前日比1万円(1.7%)安の58万7000円。

更新日時 : 2007/04/27 16:06 JST
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003015&sid=aEtxjoaCEguA

by thinkpod | 2007-04-27 15:57


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