2006年 07月 20日
インドへの軍事兵站拠点として一ヶ月に12万の軍派遣が可能になる 北京とチベットのラサを結ぶ「青蔵鉄道」が繋がった。来年から本格的な運行に入る。 日本のマスコミは観光の話題にしか焦点を当てていないが、ツーリズムは表面の現象でしかない。朱首相以来の「西部開発プロジェクト」の目玉としてチベットおよび青海省の経済発展に寄与するというのは中国共産党一流の政治プロパガンダ。日本のマスコミは、「地球の歩き方」的な報道姿勢を改める必要があるだろう。 いったい高度5000メートルを超える難所を含め、およそ一千キロが高度4000メートルの凍土を走る難工事を敢行した理由は何か?第一にチベット族の同化政策が目的である。 チベット族を漢化して「中華民族はひとつ」とする洗脳教育は最近とくに激しくなった。 すでに中国がチベットを侵略し、数十万のチベット民族を殺戮してから半世紀以上。仏教寺院の破壊と僧侶への弾圧によって、まともな宗教指導者は稀少となった。ポタラ宮は中国人観光客に溢れているが、宮殿の随所に公安が眼を光らせている。 ラサの街を歩けば洒落た土産屋、ショッピングモール、レストラン、いやタクシーさえも殆どが漢族の経営、チベット族はと言えば人力車、レストランの前で民族楽器を弾く、或いはポタラ宮前の広場で物乞い。つまり漢族の植民地化しているのである。 チベット族は、現在の行政区分であるチベット自治区のみならず、昔の大帝国、「吐蕃」の版図全域に分散して住み、北京語では「蔵族」(ツァン)を充てる。チベットは西蔵、じつに勝手な命名である。青海省西寧郊外にひろがる塔爾寺など、ラサのポタラ宮に迫るほどのダイナミックな建物だが、ここに象徴される多くのチベット仏教寺院にはダライラマ猊下の写真がない。あるのは「偽パンチェンラマ」の写真。それも大きく飾られるようになり、若いチベット世代はダライラマの存在をその意義さえ理解できなくなった。▲消えてゆく運命なのか、チベット語 もっとも小学三年生の段階から教室でチベット語をつかうのは御法度、くわえて試験問題、クルマの免許、国家公務員試験、大学入学試験は、これすべて北京語。したがって若いチベット族は、ついにチベット語が満足に喋れなくなった(ウィグルも同じ)。 言語の消滅、文字の消滅は、かつても満州文字、モンゴル文字、トンパ文字、西夏文字が消滅したように(学術研究がつづき、博物館にのみ文字は残るが)、チベット文字さえも、消滅の危機に晒され始めた。 つぎは伝統と文化の完全な破壊である。 青蔵鉄道の第二の狙いは軍の輸送能力の向上である。 それはチベット恒久支配の現実を見せつける政治効果と同時に、対外的にはインドと軍事的緊張が高まれば、中国人民解放軍は一ヶ月以内で、十二万の軍をチベットへ派遣できるというロジェスティックが完成したことを示威する目的があるのだ。 インドと中国が表面的な緊張緩和に動いているとする分析が多いが、これは表面的にすぎるのではないか。 インドは長距離ミサイルの発射実験を繰り返し、その射程に北京、上海、広州が含まれる。インド人の多くは「中国脅威論」を信じており、米国の協力を得る原発の開発にしても、さらなる保有原爆の質的向上を目指すという深謀遠慮がある。 http://www.melma.com/backnumber_45206_3282528/ 中国の言語空間 さて些細な事を御うかがひ致したいのですが… 先生はシナで現地の人から「普通の日本人もオマエと同じくらゐ普通話を話すのか?」と聞かれたと、以前お書きです。さういふ経験は北方・南方・辺境、いづれで多くありましたでせうか?(また漢族・非漢族、いづれで多くありましたでせうか?)現在の普通話は民国時代の「国語」であり、それは更に清朝時代の官話(宮廷用語)が基礎になつてゐると想像いたします。現地人の、普通話を話す人(先生)への反問は畏敬の念の表明であり、それは直接的には清朝宮廷への尊崇、長い目で見ればシナ文明の「官尊民卑」の伝統(価値観)に由来するものではないかと想像するのですが、先生の御意見は如何でせうか? (showa78)(宮崎正弘のコメント)ご質問の趣旨はよくわかります。しかしいまの中国はおっしゃるような言語空間ではないのです。 新彊ウィグル自治区へ数年前にいったおり、ウィグル人の若い女性が中国語のテキストで、懸命に「漢字」を覚えていた。国家公務員の試験を受けるのだから、と言っておりました。ウルムチは人口200万人。すでに八割が漢族です。 二十年前、香港の人は普通語を喋らなかった。いや、喋れなかった。 いまも香港の新聞の半分は広東語です。高卒以上でないと普通語は喋れなかったのですが、いまや「狼の乳をのんだ子供たち」(北京の洗脳だけで育った世代)は広東語を田舎のコトバと認識するまでになり、普通語を喋るのです。 香港が北京語(普通語)に浸食され、台湾はずぅっと昔から普通語です。台中から台南、高雄まで行って台湾語の世界が拡がりますが。。 で、この現象はハルピンのずぅっとさきの黒河(ロシア国境)でも満州里やノモンハン、ホロンバイルでも同じ。南は雲南省のシーサンバンナあたりでも同じです。 先日、四川省の山奥にいたとき、チベットの美人に足裏マッサージをして貰いました。そのときに彼女と話して最大の衝撃は「わたしチベット語、喋れない」とあっけらかんと発言したことです。少数民族の言語は小学校三年生から教室では使えない。全部、強制的に普通語(北京語)であり、クルマの免許も大学の入学試験も普通語です。 つまり、おっしゃる意味での北京語への反発的な感情は二世代ほど前の感情。いまは新しい段階に突入した、と考えるべきでしょう。 ウィリー・ラム(香港CNNのチャイナウォッチャー)が「青蔵鉄道はチベット民族への同化政策が本当の狙いだ」と言っておりました。状況はそれ以上に現場では進んでおり、官尊民卑は、一世代前の話になってしまいました。恐るべき実態が進んでいます。 http://www.melma.com/backnumber_45206_3266865/
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| 2006-07-20 22:30
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