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2006年 07月 15日

アーミテージ氏が語る新しい日米安全保障体制

去る6月27日、東京渋谷にある国連大学ウ・タントホールにて、NPOセキュアなデジタル社会を推進する会主催による「デジタル社会推進シンポジウム2006」が開催された。
前米国国務副長官のリチャード・アーミテージ氏をはじめ、前米国政府重要インフラ担当高官のジェイソン・ヒーリー氏などが登壇し、今後心配されるサイバーテロやサイバー戦争などの危険を指摘、米国におけるインフラ防御の対策などを語った。
テロリストによるサイバーテロは現在のところ、まださほど顕在化していないが、今後、テロリストがコンピューターやネットワークなどに習熟してくると、世界の経済や体制を揺るがしかねない事態に陥るおそれがあると語った。
なお、次回は佐藤英明氏(インターナショナル・ネットワーク・セキュリティ代表取締役社長兼CEO)、3回目はジェイソン・ヒーリー氏の講演内容を紹介する予定。

リチャード・アーミテージ氏/前米国国務副長官
文/吉村 克己、写真/いずもと けい
7月12日公開




 前米国国務副長官のリチャード・アーミテージ氏は昨春までブッシュ政権下で国務副長官を務め、日本の事情にも詳しい親日家として知られている。

 アーミテージ氏は1983年から89年までレーガン政権で国防次官補代理、国防次官補を歴任、2000年に対日戦略文書「アーミテージ・レポート」をまとめるなど、日米の安全保障問題について当事者としてかかわってきた。

 この日、「新しい日米安全保障体制について」と題して、2020年に向けて日米を巡る世界事情がどのように変化するか予測を交えて語り、その中で日本がどのような対応をするべきか示唆に富んだ講演を行った。

 同氏は2020年に向けて七つの確実なことと、それに付随する不確実な問題があるという。


七つの確実なことと不確実な問題

前米国国務副長官
リチャード・アーミテージ氏
 第1に「グローバル化の進行」は確実だが、競争激化の下で破たん国家が生まれる不確実性も高まると警告した。

 第2に「世界経済のさらなる成長」は確実だが、一方で「経済格差が広がる」不確実性もある。格差が拡大するようならば、難民や移動民族の問題は世界的な課題となるだろう。

 第3に「高齢化」。日本や欧米で確実に高齢化が進む一方、中国やインド、ブラジルなど人口が増加する国の平均年齢は若さを保つ。

 高齢化の中で、先進諸国は社会保障や市民との契約を満たせるのか。もし、コストがかかって満たせなくなれば、防衛費などを削らざるを得なくなり、米国と同盟国との連合も関係が変化するおそれがあるとアーミテージ氏は不確実性を指摘した。


中国の台頭で世界が不安定に

 第4に「中国の台頭」。21世紀における中国の台頭は19世紀のドイツ、20世紀の米国と同じ意味をもつとアーミテージ氏は強調した。だが、既存の超大国が次の超大国を迎えるに当たっては自ずと不安定さが増す危険性も指摘した。

 第5に「石油資源」。同氏は2020年までの段階に限っていえば石油資源が枯渇することはなく、確実に世界に供給できると語ったが、一方で、産油国の不安定性が増し、1バレル70ドル前後の現在の水準から高くなる可能性もあると述べた。

 第6に「都市化の進行」。地球上ではじめて都市部に住む人々の数が農村部に住む人の数を上回ったと、同氏は重要な事実を指摘し、メガシティが今後、増え続ける人口を受け入れ、インフラの供給や人々のニーズを満たすことができるのか不確実さが増していると語った。

 第7は「超大国たる米国の存在」だ。米国は2020年までは依然として超大国として存在し続ける。その米国に取って代わる国家や国家集合体はあるか。その綱引きが不確実性の要因となる。

前米国国務副長官 リチャード・アーミテージ氏



北東アジアにナショナリズムの危険

 アーミテージ氏はこの後、アジアにフォーカスを当て、その課題について、いくつか指摘した。

 まず第1に、北東アジアにおいてナショナリズムが台頭している危険。ナショナリズムといってもいい意味と悪い意味のナショナリズムがある。

 「先日、王貞治監督率いる野球チームがWBCで活躍したときの日本の盛り上がりぶりはすばらしいナショナリズムだが、国同士の不和を生じさせるようなナショナリズムは危険です」。

 第2に中台関係の緊張。第3に朝鮮半島を巡る問題(※)。

※ このシンポジウムが開催されたのは、北朝鮮のミサイル発射(7月5日)の前の6月27日。アーミテージ氏は個人的な見解と前置きしながら、「北朝鮮はミサイルを発射しないと思う。中国の高官が平壌に行き、米国もこの問題に関心を示したことで北朝鮮政府は目的を果たしたからだ」と語った

 また、同氏は日本と韓国を巡って、竹島などの領土問題があることも付け加えた。

 第4に、フィリピン、タイ、インド、中国などにおける抵抗や反乱の動きも注視すべきと語った。第5にエネルギー資源を巡る競争。そして、混乱が続く東ティモールでアルカティリ前首相が辞任に追い込まれた問題を取り上げ、「破たん国家になりかねない」と警告を発した。


軍事大国化する中国の課題

 アーミテージ氏が講演の中で、多くの時間を割いたのが中国問題だ。27年間、めざましい経済成長を続ける中国は軍事費も14〜15%程度の割合で増やしており、かなりの軍事規模に達したと警告した。同国は宇宙にも人を送り、2008年にはオリンピックも開催する。だが、その中国にもいくつかの問題があると述べた。

 第1に政府が経済政策を握っていることによる経済上のリスク。第2に環境問題。洪水、大気汚染などが深刻化し、疫病が中国から広がるおそれもある。

 第3に安全保障。インド、キルギスタン、ロシアとの安全保障はうまく結んだが、国内の安定、北朝鮮の内部崩壊が不安定要因となる。同氏はもし北朝鮮の崩壊と共に、「外国が部隊を派遣すれば、中国も派遣するだろう」と語った。

 そして、第4に最も大きな問題が沿岸から内陸部への所得移転である。党大会でも指摘されたが、中国国内では多くの反乱が起きており、その原因は地元指導者の腐敗にあるという。

 「1949年当時、共産党が国民から支持されたのは、経済格差の解消にあったが、現在は49年より格差が大きくなった」と同氏は語った。今後、中国が幹部の腐敗を撲滅し、沿岸部と内陸部の経済格差を解消する努力をしないと、不安定さが増すだろう。

 第5に日中関係悪化の問題だが、「靖国問題は一つの症状であり、悪化の原因ではない」と語った。真の原因について同氏はこう分析する。

 「ほとんど同時に北東アジア地域に日本と中国という同じ力を持ったプレーヤーが存在していることこそ原因だが、先日、麻生(太郎)外相と中国の外相が予定より30分も長く会談を行ったことで、靖国問題もいい方向に進んでいくのではないでしょうか。日中関係には前向きの進化が見られる。次期首相が誰かという問題は関係ないでしょう。

 それよりも中国における最大のフラストレーションは米国の存在なのです。中国にとって一番重要な国は米国だが、米国にとって一番重要な国は日本です。これが中国人にとってはフラストレーションになるわけです」。


韓国問題は日米共に対処が難しい

前米国国務副長官
リチャード・アーミテージ氏
 日韓の関係悪化においても同氏は日本と韓国と米国の関係が背後にあると分析した。1905年に日本はポーツマス条約(日露講和条約)において、米国の仲介を得て、ロシアと講話、大韓帝国に対する排他的指導権などを獲得したが、この行為は「韓国からすると米国に背後から刺されたようなもの」と語る。

 「日本にとって韓国問題は対処が難しいが、米国にとっても韓国問題は難しい。というのも、韓国は米国がいつも日本の味方をすると思っているからです。北朝鮮も本質的には同じです」とアーミテージ氏は言う。

 一方、インドは日本に悪い感情を持っておらず、政策的にも「ルックイースト」を採用していると同氏。

 「1週間前にワシントンで米国、インド、日本3国の会議がありましたが、インドの外交官はわたしに『(第2次世界大戦において)日本がインドの一部を占領したが、それによって結果的には植民地から脱するのが早まった』と言いました。彼らは日本に悪い感情を持っていない。日本もインドも民主主義国家ですし、中国とは違い、東南アジア諸国に対して安心できるモデルを示しています」。


中国の透明性を高めることが重要

前米国国務副長官
リチャード・アーミテージ氏
 アーミテージ氏は講演の締めくくりにおいても中国の問題に触れた。米国はニクソン政権下で中国との国交樹立を果たしたが、それ以来、「中国が孤立しないように、内向きにならないように米国は行動してきたし、中国を封じ込めようとは思っていない」と明言した。

 「日本も対中投資を続けてきた。中国が今後、どのような方向に向かうのか米国も関心があるし、中国は透明性を高める必要があると思います。防衛の方向性もどうなるのか、中国指導層もまだ決めていないのではないでしょうか」。

 同氏は中国が北朝鮮問題に対して努力していることを評価しながらも、エネルギー確保のため、スーダンやベネズエラなどで「よくない動き」をしているとも語った。

 最後にアーミテージ氏は日本へのエールとしてこう語った。

 「世界でどの国が優れているか聞いた調査によると、アジアの人々の82%が『日本』と回答しました。彼らは(第2次世界大戦の)日本軍による占領は独立への機会になったと考えています。日本は文化、政治、安全保障の面でも優れた模範を提供でき、その役割は高まっているのです。日本はこの現状をゆったりと構えてとらえ、もっとアジアに関わっていくべきです」。


日本は自信と大局観を持て

 アーミテージ氏は日本が自信と大局観を持ち、アジアに対してかかわっていくべきだと説く。

 「『中国に対してどのように適切に対応するべきか』とよく日本で聞かれるのですが、この質問そのものが適切ではありません。中国ではなく、アジアに対してどう適切に対応するかということが重要なのです。

 現在、日米関係はうまくいっており、提携や協力関係が進んでいます。国家同士の付き合いは結婚のようなもので、維持するにはお互いの努力が必要です。日米はもっと政治的議論を増やすべきでしょう。

 今後、日米間でFTA(自由貿易協定)を結ぶ可能性もあります。農業問題が障害になるという人もいますが、農業はGDPにおける割合は小さい。2国間のさらなる関係強化が必要でしょう」。


北朝鮮への先制攻撃はあり得ない

 講演後、会場から質問が相次いだが、ここでは、その一部を抜粋する。

Q.先日、ペリー元国防長官が北朝鮮のミサイル発射基地を先制攻撃することを提言したようですが、どのように思われますか。

A.あの発言にはわたしも驚きました。米国は北朝鮮に対して単独で行動しているわけではないので、勝手な先制攻撃などできないでしょう。しかも、もし攻撃したら反撃によってソウルや東京が被害を受けるおそれもあります。我々が先制攻撃の能力を持っていることは証明できますが、日本や韓国の友人を危険にさらすようなことは起こりえないでしょう。

Q.中国は現在、共産党の一党独裁ですが、今後、民主化するでしょうか。

A.中国でも一部、選挙が行われるようになりましたが、日米のように指導者を選べるわけではありません。近年、NGO(非政府組織)の活動も活発になっており、NGOが政治運動に移行する可能性もあります。舞台裏ではいろいろと起こっているようですが、なかなか見えないですね。

イラクは第2のベトナムになる危険も


Q.新しい日米安保体制はどのように築くべきでしょうか。

A.日本の政治家は日米安保の実像についてあまり語りませんね。米国は日本に核兵器の脅威が迫れば、核の傘を提供するだけでなく、犠牲を出しても日本を防衛すると考えています。

Q.国連における米国の役割は今後どうなるでしょうか。

A.これまで旧ソ連が拒否権を連発したことで、国連において実現できなかったことが多い。その結果、国連事務総長に権限を集中するようになり、事務総長がかつてないほどの力を持つようになりました。米国が国連にもっとかかわるためには、事務総長の権限を縮小するべきだと思っています。

Q.イラクは、このままでは第2のベトナムになるという意見がありますが、いかがですか。

A.わたしはかつて6年間、ベトナム戦争に従軍しました。イラクが間違った方向に進むと、ベトナムより大変なことになるでしょう。ベトナム戦争は間違いだったという人もいますが、東南アジア諸国の発展には必要だったとわたしは思います。イラクは今後も難しい問題であり続け、戦いは続くでしょう。今回、はじめて正式政権がイラクに生まれたことはいいことです。スンニ派とシーア派の間で何とかやろうとしている人たちがおり、米国国民も忍耐強く対処していくべきでしょう。



アーミテージ氏が語る新しい日米安全保障体制/SAFETY JAPAN [特集]/日経BP社
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/special/150/index.html
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by thinkpod | 2006-07-15 17:30 | 国際


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