2005年 12月 27日

不法移民 米、寛容策に賛否 低賃金で経済下支え/下院は規制強化

 【ワシントン=気仙英郎】米国の移民政策が揺れている。米国内にいる約一千百万人の不法移民は、堅調な米経済を下支えする、なくてはならない労働力だが、賃金低下を招いて労働環境を悪化させると取り締まり強化を求める声が強まっている。ブッシュ大統領は抜本策として先月末、不法移民の厳しい摘発を約束する一方、外国人労働者を一定期間、合法的に受け入れ、その後母国に帰国させる「ゲストワーカー」計画を提案した。だが、米国内のヒスパニック系住民や産業界、そして来年の中間選挙をにらむ議員らの思惑が複雑に入り交じって、実現には曲折が予想されている。

 米国内の不法移民は、毎年五十万人超がアリゾナ州やテキサス州などのメキシコとの国境地帯を越えて流入しているといわれ、おもに、農業やレストラン、清掃、家政婦などの労働者として雇用されている。こうした南米の貧困層の不法移民らは、低賃金で働くことから、インフレを抑制しながら米国の公的年金制度のすそ野を広げる上で役立つため、産業界は緩やかな対応を求めている。

 これに対して、労働組合や黒人団体などは、「賃金低下を招き労働環境を悪化させる」として厳しい措置を要求。学校や医療面での公共サービスの負担が大きくなることから、アリゾナ州が不法移民に対する公共サービスを削減する法律を制定したのをはじめ、カリフォルニア州やコロラド州などでも同様の法律を作る動きが相次いでいる。

 ブッシュ大統領はこれに対して、外国人労働者に三年間、労働許可証を発行して合法的に受け入れるゲストワーカー計画を提案した。その一方で、不法移民は出身国の居住地まで強制送還する措置やハイテク装置を使った国境警備対策などを発表した。アメとムチを使い分ける算段だ。

 しかし、米下院は今月中旬、大統領提案のゲストワーカー計画を否定。むしろ、移民規制強化のために、米国内の労働者すべての合法性の証明を雇用主に義務付け、もし不法移民であることを知りながら雇用すれば、一件あたり二万五千ドルの罰金が科される移民規制法案が可決された。

 米商工会議所をはじめとする米産業界は強く反対し、米国の移民の多くが中南米から来ることから、「寛大な移民政策は、党勢拡大の機会ととらえる」との意見もあって共和党、民主党ともに一枚岩ではなかったが、法案賛成が多数を占めた。

 年明けには、大統領提案を含む同様の法案の審議が上院でも始まる。ブッシュ大統領は来年の政策方針を発表する一般教書演説で、このゲストワーカー計画を取り上げ、国民に向け改めてアピールする方針だが、上院でも賛否をめぐる激しい攻防が必至の情勢だ。

不法移民 米、寛容策に賛否 低賃金で経済下支え/下院は規制強化
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by thinkpod | 2005-12-27 16:12 | 国際


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