2005年 10月 26日

首相靖国参拝 「反日」抑制、現実対応に 中国、経済交流の拡大重視

 小泉純一郎首相の靖国神社参拝から二十四日で一週間。中国、韓国との外相会談が見送られるなど首脳外交への影響が懸念されるものの、両国の反発に広がりは見られない。当初から問題視しない姿勢を示してきた米国を含め、就任以来五回目となった首相の靖国神社参拝は、ようやく現実的な対応で受け止められるようになった。

 【北京=伊藤正】小泉純一郎首相が靖国神社を参拝した翌十八日、中国外務省の孔泉報道官は定例記者会見で、日本の主要なメディアは、産経新聞一紙を除き、参拝を批判ないし否定的態度を取ったと述べた。「民意を侮るな」「持ち上げた石を自分の足の上に落とす」との表現まで使った外務省声明がメディアに理解されたことを誇っているように見えた。

 しかし、メディアの論調が「民意」を反映しているとは限らない。

 朝日新聞と共同通信の世論調査では、「参拝してよかった」が「すべきでなかった」を上回った(朝日は42%対41%、共同は48・1%対45・8%)。参拝支持の理由で「他国に影響されるべきではない」が共同では一位(53・1%)、朝日でも二位。中韓の強硬態度が反発を招いたことを示した。

 両社の世論調査結果は、中国では報道されなかった。小泉首相の参拝は「日本国内でも強烈な反対を受けた」(「人民日報」「解放軍報」の評論)としてきたからだ。

 メディアが政府の統制下にある中国では、記事の扱いは政府の方針を反映するが、今回は抑制ぶりが目立った。今春の日本の国連安保理常任理事国入り反対やその後の抗日戦勝六十周年でのキャンペーンとは比べるべくもない。

 日本のメディアや与野党の政治家らは、日中関係への悪影響を懸念し、反日デモ再発まで警戒した。中国の意図、国内事情への理解不足に基づく過剰な反応といえる。

 中国共産党中央学校党史研究室の林暁光研究員は産経新聞とのインタビューで、実務関係への影響はほとんどなく、大規模な反日デモ再発の可能性も否定した。林氏は参拝を批判したが、「胡錦濤政権が国内のインターネット世論と軍の圧力を受け、対応に苦慮していることを理解していない」という理由だった。

 日本側には「中国は一枚岩」との誤解が生じがちだが、社会が多元化、省庁間や地方間の利害関係も複雑化した現在、そんなことはありえない。今春の反日デモの後、国内圧力に弱い中国外務省が、デモを容認する態度を表明したことが反発を受けたのは一例だ。

 日本の観光客が激減、ビジネスに影響が出始めると、商務省当局は激怒したといわれ、薄煕来商務相が日本関係企業による中国人雇用者は九百二十万人などの数字を挙げてデモ抑止を訴えた。首相の参拝継続で首脳の相互訪問は途絶えたが、経済関係は拡大を続け、政府間交流にも支障がないのも、靖国批判の看板と現実的利害は別という中国の現実主義による。

 今回、中国は、町村信孝外相の訪中や東シナ海協議の延期を表明したが、国内の圧力が依然強いことの反映とみてよい。しかし、核問題の六カ国協議やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を来月に控え、対日協議を拒否し続ける可能性はまずない。官民とも日中の利害関係はあまりにも深いからだ。
[sanki]
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by thinkpod | 2005-10-26 06:14 | 政治経済


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