2005年 10月 13日

在米中国パワーの歴史観

米国での中国のプレゼンスの拡大をいやでも感じさせられる。首都ワシントではとくに議会や研究所での中国がらもの議会や研究所での中国がらみの公聴会、セミナーの数がますます多くなった。その種の集いに顔を出す中国人の数がこれまたいつも増えている。日本と比べると、その存在はずっと活発で大規模にみえる。
 
 ブッシュ政権の中国への警戒を反映して議会では批判的な公聴会や討論会が多い。常設の関連委員会に加えて、超党派の「米中安全保障調査委員会」は十二人の民間専門家が議員とともに、三月に一度ぐらいの割で中国の経済拡大がその軍事力にどう影響するかの公聴会を開く。上下両院合同の「中国に関する議会執行委員会」は毎月二度ほど専門家を証人として招き、中国の人権状況を論じる。
 
 民間のシンクタンクとなると、ヘリテージ財団、外交評議会、ブルッキングス研究所など中国関連のシンポジウムなどの開催はさらに頻繁となる。この種の集いで目立つのは傍聴者も証人も中国人がきわめて多くなっている点せある。
私は1998年にワシントンから北京に転勤し、2001年にまたワシントンに戻ったのだが、98年以前は公開の場で中国人が発言や質問をするという場面は皆無に近かったのに、いまやごく普通なのだ。
 
 米国全体でも中国人の学生や学者がものすごく増したのである。大学生以上の正規の留学では中国人はもう六万人を超えて世界第一、日本人留学は四万六千人ほどで第三位にすぎない。中国からの学生も学者も本国にはまず帰ろうとしなでがんばる点が日本人とは対照的である。いわば背水の陣で勉学するせいか、ワシントンでも米国の大学の博士号を持ち、米側の集会で証言する中国人専門家の活動が目立つ。
米国の各主要大学でも中国人の教授が急速に増えてきた。大多数は中国研究を専門とする中国人教員も多い。
 
 ワシントンではアメリカ大学の日本政治の趙全勝教授の日本歴史の楊大慶教授が知られる。日本人留学生にとっては皮肉なことに米国の大学に留学して、日本の政治や歴史を中国人から学ぶという現象がおきているのだ。
ワシントンでの中国パワーの実態は日本の中国専門外交官としてワシントンに三年在勤して昨年、東京に戻った片山和之氏(現外務省国際エネルギー課長)の著書『ワシントンから眺めた中国』に詳しい。片山氏はワシントンの大学の日本史クラスで日本人学生がかなりいるのに黙ったまま、中国の米国の学生たちだけが活発な討論を展開する、というような話を紹介している。
 
 さて、こうした米国定住の中国人たちが北京政府とはどんな関係にあるのか。以前は天安門事件などで追われてきた民主派と共産党側の人との区別が簡単についたのだが、最近は微妙である。グレーにみえる人たちが多いのだ。だが個別に注意してみると、いまも中国へ定期的に戻っている人たちは自国の政府や共産党を正面からは決して批判しないようだ。この点も在米日本人とは対照的である。
 
 ワシントン在住の中国人は中国共産党の意向を反映する向きが多く、日本に対しても歴史』問題で追及する構えを常時、とっている。「戦争の真実を追及する連盟」とか「ワシントン慰安婦連合」という組織があり、大学や図書館の構内で「慰安婦展」「南京大虐殺展」を開催するのだ。こういう中国人たちの長期目標は米国の首都ワシントンに中国版「ホロコースト博物館」を開設することのようだ。ワシントンにはすでにユダヤ系米人が主になって米国政府を動かし開設したホロコースト博物館がある。在米中国人や中国系米人の一部はこれに似せて、日本軍の中国での行動を展示する公共施設をつくろうとしている。

 前述の片山氏の著書も、中国人たちの間でのそういう博物館開設のための宣伝や集会、寄付の活動が展開されていることを伝えている。
日本としてはこれまでの中国側の一方的で、よく変わる「戦争記録」をもとに廬溝橋にあるような記念館を米国の首都に開かれたのでは、たまらない。在米中国パワーの動向に細かかな注意を払い、そうした一方的な行動が米側には受けいれないように当事者としての日本側の主張をも述べ続けるべきだろう。
産経・ワシントン・古森 義久
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by thinkpod | 2005-10-13 05:05 | 国際


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